当科の特色
臨床工学技士(以下:CE)は医療機器の専門医療職です。高度化していく医療の中で、医療機器も進化しています。その医療機器を安全に使用するために、豊富な知識・技術が必要です。また、呼吸・循環・代謝という生命維持に直接繋がる医療機器の操作・管理を行い、チーム医療の一員として患者の治療に貢献しています。
業務内容は、医療機器管理業務、急性期血液浄化業務、集中治療支援業務、人工呼吸管理業務、ペースメーカ関連業務、心臓・脳カテーテル検査業務、手術室業務など多岐にわたっています。また災害医療派遣チーム(DMAT)活動にも、参入しています。
当院では、現在、10名のCEが在籍しており、24時間365日(夜間、休祝日;日・当直制)対応しています。
臨床工学科の業務
医療機器管理業務
高度化・精密化する医療機器を安全に現場で使用するために、当院では、医療機器を中央管理化(貸出・返却・点検・修理)しています。日常の動作点検・確認に加えて、より精密な定期点検を行い医療安全に努めています。
このように、医療機器を中央管理化することで、保有台数の適正化を図るとともに、いつでも安全で清潔な医療機器を提供できるよう心掛けています。
[中央管理対象医療機器]
輸液ポンプ、シリンジポンプ、低圧持続吸引器、人工呼吸器、非侵襲的人工呼吸器、加湿器、個人用血液透析装置、持続血液ろ過装置、RO装置、IABP、PCPS、冷温水槽、除細動器、酸素流量計、生体モニタ、保育器、内視鏡光源装置、低体温維持装置など40機種1500台を中央管理しています。
[使用後点検]
外観点検・外観清掃・動作点検・警報動作点検・バッテリ充電
[定期点検内容]
外観点検・外観清掃・定期部品交換・精密動作点検・警報動作点検・漏れ電流点検・バッテリ駆動点検
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
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医療機器貸出件数 | 7,873 | 8,386 | 9,340 | 8,866 | 9,817 |
血液浄化業務
集中治療室(ICU)での敗血症、急性腎不全、心不全を合併した腎機能急性増悪患者や、慢性腎不全患者の急性増悪に対するさまざまな血液浄化を積極的に行っています。また、肝不全や薬物中毒による血漿交換(PE)や血液吸着(DHP)なども行っています。
腹水濾過濃縮再静注法:CART
難治性腹水症に対する腹水濾過濃縮再静注法(CART)を行っています。
各科との連携をとり積極的に行っています。
[保有装置]
- 個人用血液浄化装置 DBG‐03:1台
- 急性血液浄化装置 TR-55X-Ⅱ :3台
- KM‐8700EX :2台
[ICU(集中治療室)での急性血液浄化療法]
[病棟・外来での白血球除去療法]
[血液浄化療法施行件数]
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
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HD(血液透析) | 144 | 67 | 60 | 85 | 70 |
CHDF(持続透析) | 147 | 155 | 86 | 169 | 105 |
DHP(血液吸着) | 9 | 13 | 12 | 18 | 15 |
PE(血漿交換) | 0 | 0 | 14 | 1 | 0 |
CART(腹水濾過濃縮) | 16 | 16 | 33 | 28 | 47 |
人工呼吸管理業務
初療、集中治療室、病棟HCUで使用する人工呼吸器としてEvita2Dura、EvitaV300を計17台保有しており、非挿管型人工呼吸器として、V60(NIPPV)を3台、ハイフローセラピーシステムを3台保有しています。CEは、院内ラウンドを中心として業務を行い、呼吸モードなどの医師の指示内容の確認、使用環境、動作状況を確認して、場合によっては気管内吸引も行っています。
また、医療事故を未然に防ぐ目的で、点検業務を定期的に行っており、呼吸ケアチーム(RCST)にも組織の一員として加わり現場に貢献しています。
[保有装置]
- 人工呼吸器 Evita2Dura、V300:17台
- 非侵襲人工呼吸器 V60:3台
- ハイフローセラピーシステムNHF :3台
[人工呼吸器稼働実績]
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
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人工呼吸器貸出件数(件) | 527 | 590 | 678 | 460 | 515 |
集中治療支援業務
集中治療室(ICU)における、生命維持装置である血液浄化装置(HD・CHDF・PE)、人工呼吸器、補助循環装置(IABP・VA,VV-ECMO)を操作・体外循環管理を行うことで、集中治療領域における治療に貢献しています。そして、院外心停止患者の蘇生後に発症する脳障害軽減のために、脳低温療法も積極的に施行しています。
[保有装置]
- ECMO SP-100,200 : 4台
- IABP BP21,3 : 3台
- 低体温装置 サーモガード : 2台
ペースメーカ関連業務
CEは、ペースメーカの植え込み・電池交換手術におけるプログラマの操作・解析・外回りを行い、植え込み後のペースメーカチェック、ペースメーカ外来を行っています。また、2018年度より遠隔モニタリングを導入しており、患者さんが自宅に居ながらもインターネットを通じて機器の状態を遠隔で確認しています。ペースメーカの状態を定期的にプログラマでチェックする事で、患者の心臓の不整脈の状態や心不全管理を循環器内科の医師と共に協力し合い、より良い生活をサポートします。
[当院でのペースメーカ植え込み件数]
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
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ペースメーカ植え込み(件) | 34 | 32 | 36 | 36 | 36 |
ペースメーカ電池交換(件) | 9 | 17 | 16 | 9 | 13 |
ペースメーカチェック件数(件) | 575 | 528 | 534 | 535 | 503 |
遠隔モニタリング件数(件) | – | – | – | 171 | 303 |
心臓・脳カテーテル業務
千里救命救急センターと循環器内科、脳神経外科の医師が協力し合い、昼夜を問わず、患者を受け入れています。CEは、経皮的冠動脈形成術(PCI)、脳カテーテル治療を行う上で、医療材料を清潔野に出す外回り、清潔介助、ポリグラフの監視、画像診断装置(IVUS・OCT)の解析、虚血評価デバイス(FFR:冠血流予備量比)、電気生理検査(EPS)やアブレーション、補助循環装置の導入操作・介助・体外循環管理を行っています。また、CEは周りの医師・看護師・診療放射線技師と協力し合い、より迅速なチーム医療を達成しようと日々努力しています。
[心血管冠動脈形成術PCIの治療風景]
[心臓・脳カテーテル治療・補助循環実績]
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
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CAG(件) | 287 | 363 | 391 | 375 | 289 |
総PCI(件) | 316 | 481 | 517 | 411 | 314 |
緊急PCI(件) | 103 | 118 | 119 | 90 | 107 |
脳カテーテル症例数(件) | – | – | – | 26 | 60 |
直接介助症例数(件) | 244 | 630 | 695 | 671 | 554 |
アブレーション症例数(件) | 6 | 8 | 9 | 10 | 35 |
IABP(件) | 45 | 56 | 44 | 30 | 37 |
VA,VV-ECMO症例数(件) | 38 | 59 | 46 | 44 | 41 |
手術室業務
CEが手術開始前に予定手術に使用する医療機器の点検を行い、トラブル対応を行うことで、手術室看護師とのチームワークを高め、より精度と質の高い手術環境と技術を提供し、患者の手術をサポートします。
手術室点検機器
麻酔器、電気メス、超音波メス、内視鏡手術システム、無影灯、保育器、パルスオキシメータ、シーリングシステム、生体モニタ、自己血回収装置など15機種300台を点検しています。
[臨床工学技士 手術支援実績]
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
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手術室機器点検件数(件) | 8377 | 9171 | 8999 | 8807 | 8793 |
その他業務
[PSG]
睡眠時無呼吸症候群(SAS : Sleep Apnea Syndrome)を確定するために、ポリソムグラフィー(PSG)という検査を行います。臨床工学技士は、頭や顔、身体の必要な部位に電極をつけ、脳波や呼吸、眼球、筋肉の動きなどを計測・解析をするサポートをします。
[DMAT]
当院は、災害拠点病院であり、CEも業務調整員として災害医療派遣チーム(DMAT : Disaster Medical Assistance Team)に参入しています。業務調整員の業務としては、情報や資源の管理をし、多岐にわたりチームをサポートしています。またCEとして出動時や広域搬送基地(SCU : Staging Care Unit)で使用する医療資器材(医療機器)の定期点検や管理も行っています。